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#065 彼女が欲しい若者に適当に彼女の作り方を教えたら本当に彼女が出来た話②

第2のアドバイス:自分が好きよりも相手が好きかどうか


 

「一人の人に好かれるだけでも大変ですよね。問題は自分が好きであっても、相手が自分を好きかどうか?にかかっています。では、意中の人に“だけ”好かれるのが良い事でしょうか・・・?」

 

 

田中さんは驚いたように答えました。

 

 

「あ、当たり前じゃないですか!意中の人だけに好かれたら、それでいいんですよ。」

 

 

私は、そうではない事、そして、しなければいけない事を伝えました。

 

 

「意中の人だけに好かれるような自分になって、その結果、意中の人との交際が出来なかった場合、その自分は他の人には好かれようもありません。だって意中の人好みの自分になってしまったのですから、他の人には通用しないのです。サバを釣る餌と、イカを釣る餌は違います。これは分かりますね。」

 

 

「はい。」

 

「ですので、ここは一気に5人くらいを狙ってアプローチをしていきましょう!」

 

 

 

「えぇぇぇぇ!ご、5人ですか?」

 

田中さんは驚きました。

 

 

「えぇ、5人です。10人でも良いんですよ。なぜなら、1人の人に好かれるだけなら、その人よがりの自分になれば良いだけですが、多くの人に好かれようと思ったら、人間的に素晴らしい人でないと好かれる事はありません。人間的に素晴らしい人になったのなら、きっと告白すれば彼女ができるでしょう。」

 

 

 

「な、なるほど・・・。」

 

田中さんは、おっさんの適当なアドバイスであるにも関わらず、なにやら悟ったような表情を浮かべると、早速やってみます!

 

と言い残し、その場を後にしました。

 

 

 

 

 

 

 

おわりに


 

その後、3ヶ月くらい経った頃でしょうか。

 

季節は夏から秋に変わって、すっかり人肌恋しい季節がやってきました。

 

 

私がその朗報を聞いたのは、秋にしては少し日差しの強い、そんな夏とも秋とも分からない日だった。

 

 

ある会場でセミナーを行う予定であった私は、そのセミナーを受講するという田中さんを車に乗せ、現地へ向かった。

 

その車中での出来事である。

 

 

ちなみに、その会場に車で行くのは2回目であったが、私は道すら覚えておらず、だいたいアッチの方だと決めつけて運転していたときの事だ。

 

 

「あ!そういえば報告を忘れていました。言われたとおりに、5人にアプローチ出来るよう、万遍なくどなたにも好かれるような人物で居ようと努力を重ねた結果、ついに念願の彼女を作る事に成功しました!

 

田中さんは、実に嬉しそうに報告を行った。

 

 

 

私は、左折専用レーンに居たにも関わらず、右折するほどの衝撃を受けた。

 

「お、おぉ・・・おめでとう!(まさか)アドバイスが役にたったんだぁ・・。本当によかったね!」

 

 

 

自分でも、まさか自分のアドバイスで本当に彼女が出来るとは思っていなかった。

 

何故かというと、当たり前の事を当たり前にアドバイスしただけだからだ。

 

 

 

 

この話で重要なのは、田中さんの純粋さである。

 

田中さんが純粋であったからこそ、私のアドバイスを素直に実行し、その結果として彼女をゲット出来たのである。

 

 

 

どうせ自分なんか・・・とか。

 

そうは言っても現実は甘くない・・・とか。

 

 

 

懐疑心バリバリの人は、おそらく純粋に実行はしないだろう。

 

少し「やってみるか」程度でカジって、上手くいかなかったら「ほら、見た事か!」と自分を納得させるだろう。

 

 

 

田中さんと違い、こういう人に彼女が出来ない事は当たり前で、それはその人が変わらない限り永遠(エターナル)なのだ。

 

私は、このまま田中さんが幸せに彼女と過ごせれば良いな、と思いながら車のアクセルを踏んだ。

 

 

 

それはセミナー会場とは違う方向であったが・・・。

 

もちろん、セミナーに講師が遅刻するという大失態を犯すのは、これから間もない事である・・・。

 

 

 

 

おわり。